教育的(仮)結婚~残念御曹司(?)のスパダリ育成プロジェクト~
「そうですよ、高砂先輩」

 俺の言葉に気をよくしたのか、田島は再び余裕を取り戻したようだった。

「いや、本当にご無沙汰しております。以前から、こちらにお伺いしようと思っていたんですが、楽しみに来てみたら……さっそくこれですからね。ところでこの人、高砂さんのご友人なんですか? 桐島さんや先輩と久しぶりに再会できたのはほんとにうれしいんですが、妙なトラブルに巻き込まれたので、さすがに謝罪はしてもらわないとね」

 すると敬ちゃんは表情を改め、田島に向かって深く頭を下げた。

「田島様、本当に申しわけありませんでした。こちらでたいへんご迷惑をおかけしたようで、改めて心よりお詫び申し上げます」
「……敬ちゃん」

 こんな展開はまったく予想していなかった。亜美だけでなく、関係ない敬ちゃんにまで迷惑をかけてしまい、俺はその場から動けなくなった。

「べ、別に、高砂さんに頭を下げてもらわなくても」
「しかし責任は当百貨店の副社長である私にありますから」
「いや、悪いのはこの男ですよ。どこの社員か知りませんが、一人前の社会人ならちゃんと詫びるのが筋でしょ?」

 大学の先輩である敬ちゃんが下手に出たからか、田島はますます居丈高になった。

(こいつ……)

 田島は上に弱く、下に強い。典型的ないじめっ子タイプだ。
 
 それも気に食わなくて、俺は焦った。
 俺がさっさと土下座すれば、田島は気が済むのだ。これ以上、亜美や敬ちゃんを困らせたくない。

 ところが――、
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