教育的(仮)結婚~残念御曹司(?)のスパダリ育成プロジェクト~
 スタイルがいいのでそれなりに決まって見えるが、あくまで学生の格好だった。それもファッションに無関心な理系学生にありがちの。

(見た目はすごく怖いのに)

 しかし次の瞬間、私は思わず声を上げてしまった。

「うわ!」

 よく見れば、シャツのボタンをひとつかけ違えている。しかも靴下は白とグレーで左右の色がそろっていない。

 関心がないどころか、どうやら洋服は着られさえすればいいらしい。本当に、朝そのへんにあったものを身につけてきたのだろう。

(確かになかなかの難敵みたいね)

 もちろんこれまでは、それでも大きな問題はなかっただろう。

 だが、このローマでは東野様にとって運命をかけた数日間が控えている。今のままでは間違いなくNGだ。

 それにおしゃれなミラノの人たちほどではないにしても、この格好ではベーシックなスタイルが好きなローマっ子にだってダメ出しされてしまうだろう。

 私は大学の先輩で、高砂百貨店の御曹司でもある副社長、高砂敬三さんからかかってきた電話を思い返した。

 ――頼むよ、桐島。お前の力で、東野をなんとかしてやってくれないか。

 高砂さんによれば東野様は小学校から高校までの同級生で、気心が知れた幼なじみだという。

 ――あいつ、薬屋の跡取りでさ。家の事情で、これから金融関係のご令嬢との見合いを控えているんだ。
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