教育的(仮)結婚~残念御曹司(?)のスパダリ育成プロジェクト~
 先方はスイスで働く東野様のために、わざわざ渡欧してくるほど乗り気らしい。
 ドクターストップがかかりそうなくらい仕事熱心で、ほぼ強制的にバカンスを取らされたという彼を心配して、ローマで保養を兼ねて会うことにしたそうだ。 

 いわゆる政略結婚だから結果はほぼ決まっているとはいえ、高砂さんは心配でしかたがないという。

 ――見合いはローマに着いて五日目なんだ。相手はけっこうなお嬢様だから、その間になんとか格好つけてやってくれ。まさかとは思うが、今のままの東野じゃ不測の事態も起きかねない。

 そう聞かされた時は大げさだと思った。
 だけど強面過ぎる容姿とこのコーディネートぶりでは、そんなことも起こり得るかもしれない。

(よし!)

 かなり手強そうだが、東野様はもともと人目を引かずにはおかない(もちろんいい意味で)容姿をされている。
 私は彼本来の美点をしっかり生かそうと、改めて心に決めた。

 服装も、雰囲気も、身ごなしもすべて変えて、とんちんかん過ぎるビジュアルから、その能力にふさわしいスタイリッシュな紳士に仕立て上げ、お見合いを成功させる――そのために必要な数日間のワードローブを完璧に整えるのだ。

 私は『永遠の都』と呼ばれる美しいローマで、東野様とその婚約者となる女性に、すばらしい時間を過ごしてほしいと思った。
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