教育的(仮)結婚~残念御曹司(?)のスパダリ育成プロジェクト~
「あ、そうだ」

 東野様はよく眠っているようだが、冷房のせいで風邪を引かせてはいけない。
 私はテーブルにトレイを置き、チェストからブランケットを出した。

「う……ん」

 そっとブランケットをかけると、ソファにもたれている東野様は少し口角を上げた。なんだかとても気持ちよさそうだ。

 そんな様子につられて、私もつい微笑んでしまう。
 とんでもなく威圧感があるくせに、熟睡している姿は意外にあどけなく見えたのだ。

 ゲストカルテによると、年齢は私より六つ年上の三十三歳。

 やはり若々しさと恵まれた体型を生かし、なおかつ知的でポジティブな雰囲気を感じさせるコーディネートがいいだろう。
 一応ごくスタンダ―ドな服を用意しておいたが、彼の場合はもっと遊びがあってもいいかもしれない。なにしろ見た目が相当ハードボイルドだから。

 東野様の寝顔を見ながら、私が戦略を練り始めた時だ。

 リリリリリリリ!

 突然けたたましいアラーム音が部屋中に響き渡った。

「えっ?」

 私は慌てて周囲を見回す。その音源にはまったく心当たりがなかった。

 鳴り続けているのは非常ベルに似ているが、もう少し軽い音だ。たとえば目覚まし時計みたいな――。
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