教育的(仮)結婚~残念御曹司(?)のスパダリ育成プロジェクト~
「たいへん申しわけございませんが、もう一度サロンまでご足労いただけませんでしょうか。こちらからでしたら当店まで歩いて十分ほどでございますから、お時間のある時にお立ち寄りいただければと思いまして」
「何で?」
そう訊いてから、俺はまた後悔した。もう少しましな言い方があったはずなのだ。
さっきまでは確かに不機嫌だった。
けれど今の俺は少しも怒っていないし、桐島さんを怖がらせたくもない。むしろ彼女とまた会えたことがうれしくてしかたなかった。
それなのにうるさいくらい胸が高鳴って、どうしていいかわからない。
「はい。東野様は適当でいいとおっしゃられましたが、せっかくお買い上げいただくのですから、一度はご試着いただきたいと存じます」
「いや、俺は」
このままでは気まずくなるばかりだ。俺はなんとか軌道修正しようとした。
「いいです。あなたが選んでくれたものなら、きっと間違いないと思うから」
その時、大きな目がうれしそうに輝いた……ような気がした。それから桐島さんは俺にまっすぐな視線を向けてきた。
「いえ、そういうわけにはまいりません。たとえばズボンの裾丈ひとつにしても、お客様によってお好みがいろいろですから、きちんと合わせる必要がございます」
「ズボン? いや、別にいい。長かったらホチキスで止めるから」
「えっ?」
「何で?」
そう訊いてから、俺はまた後悔した。もう少しましな言い方があったはずなのだ。
さっきまでは確かに不機嫌だった。
けれど今の俺は少しも怒っていないし、桐島さんを怖がらせたくもない。むしろ彼女とまた会えたことがうれしくてしかたなかった。
それなのにうるさいくらい胸が高鳴って、どうしていいかわからない。
「はい。東野様は適当でいいとおっしゃられましたが、せっかくお買い上げいただくのですから、一度はご試着いただきたいと存じます」
「いや、俺は」
このままでは気まずくなるばかりだ。俺はなんとか軌道修正しようとした。
「いいです。あなたが選んでくれたものなら、きっと間違いないと思うから」
その時、大きな目がうれしそうに輝いた……ような気がした。それから桐島さんは俺にまっすぐな視線を向けてきた。
「いえ、そういうわけにはまいりません。たとえばズボンの裾丈ひとつにしても、お客様によってお好みがいろいろですから、きちんと合わせる必要がございます」
「ズボン? いや、別にいい。長かったらホチキスで止めるから」
「えっ?」