教育的(仮)結婚~残念御曹司(?)のスパダリ育成プロジェクト~
 幸い家主のパオラはこの件をおもしろがって、彼の滞在を快諾してくれた。
 あいにく二つある寝室は彼女と私が使っているから、東野様はリビングルームのソファで寝る羽目になってしまったけれど。

(もう起きようかな)

 まだ早朝だが、私はベッドの上で身を起こした。

 今日と明日は予定を変更し、店を休んで、改めて東野様にローマを案内することになっている。それに備えて、パソコンの観光情報サイトや手持ちのガイドブックを改めてチェックしようと思ったのだ。

 コロッセオ、パンテオン、フォロ・ロマーノ、それにヴァチカン市国――なにしろローマは街全体が世界遺産のようなものだし、すばらしい美術品も無数にある。

 当日にどんな服を着ていただくか、お見合い相手のお嬢様とどこへ行って何をしていただくか――これから誕生するすてきなカップルのために、最高のひとときをアレンジしてあげなければ。

(カップル?)

 瞬間、胸がズキリと痛んだ。

「えっ?」

 私は驚いて胸を押えた。

 何かを刺し込まれたみたいな鋭い痛み。こんなことは初めてだった。

(今の……何?)

 困惑しながら、ゆっくり呼吸を繰り返してみる。
 幸い痛みはすぐにおさまったので、私は首を捻りながら、ベッドから下りた。
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