教育的(仮)結婚~残念御曹司(?)のスパダリ育成プロジェクト~
 それでも義務は果たさなければならなかった。とにかく東野様たちのために、最高の観光プランをたてなければ――。
 
 お見合い相手のお嬢様が何に興味があるのかわからないが、ローマの観光でヴァチカン市国はやはり外せないだろう。
 そちらは明日行くつもりなので、今日は有名どころを歩いて回ることにした。

 まずはエジプトのオベリスクで有名なポポロ広場へ行き、近くの教会にあるカラバッジョの絵画を見て、映画でも有名なスペイン広場へ向かい、トレヴィの泉へと向かうルートだ。

 ところがどういうわけか、私はずっと落ち着かなかった。
 なんだか足元がフワフワするし、大好きなローマの景色を見てもいつもみたいに気持ちが踊らない。

(……私、いったい?)

 熱でもあるのかと思ったが、特に体調は悪くない。いや、もしかしたら脈は少し早いかも。

 そして隣を歩く林太郎さんも、そんな様子に気がついたらしい。
 トレヴィの泉を目指して歩いていた時、「亜美さん」と声をかけてきたのだ。

「どうかしたか?」
「えっ?」
「なんだか元気がないみたいだが」
「い、いえ、とんでもない。全然大丈夫です」
「それならいいが」

 林太郎さんに気を遣わせたことが申しわけなくて、私はことさら明るく言った。

「それより林太郎さん、この先にとてもおいしいジェラテリアがあるんですよ」
「ジェラテリア?」
「はい、アイスクリーム屋さんです」
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