教育的(仮)結婚~残念御曹司(?)のスパダリ育成プロジェクト~
正直、俺は世界遺産にも芸術作品にも興味がない。
だが、ここで見た数々の荘厳な遺宝にはさすがに心を動かされた。
ただし今、それ以上に俺を圧倒しているのは亜美さんだ。
彼女のことがもっと知りたかった。
何が好きなのか、どんなふうに育ってきたのか、いつも何をして過ごしているのか――とにかく何もかもが気になってしかたない。
そのくせ口下手なせいでうまく聞き出すことができず、自分がもどかしくてたまらなかった。
そんな気持ちを抱えたまま、モヤモヤしながら歩いていると、やがて昼時になった。
「林太郎さん、お昼は軽めでもいいですか? パオラが今晩は家で夕食をごちそうしたいそうなので」
「う、うん」
「リンのためにマンマ直伝のお料理を作るって、はりきっていました」
パオラさんは亜美さんがシェアしている部屋の持ち主だ。
黒髪で瞳は青。俺と同じくらいの年齢らしく、生粋のローマっ子で、美術品修復の仕事をしているそうだ。
なかなかの美人だが、とんでもなく人懐っこくて、会った瞬間から「チャオ、リン」と挨拶されて、しっかりハグされた。しかもかなり話好きらしく、イタリア語がわからない俺にも何かと声をかけてくる。
そんな彼女と亜美さんのやり取りは、見ているだけで楽しかったのだが――。
(明日には、あの家を出ていくんだな)
はじめから決まっていたことなのに、今さらながらひどく残念に思えた。
もちろん俺は見合いと、その後の結婚生活を成功させるために、こうして亜美さんと一緒にいるわけだが――。
だが、ここで見た数々の荘厳な遺宝にはさすがに心を動かされた。
ただし今、それ以上に俺を圧倒しているのは亜美さんだ。
彼女のことがもっと知りたかった。
何が好きなのか、どんなふうに育ってきたのか、いつも何をして過ごしているのか――とにかく何もかもが気になってしかたない。
そのくせ口下手なせいでうまく聞き出すことができず、自分がもどかしくてたまらなかった。
そんな気持ちを抱えたまま、モヤモヤしながら歩いていると、やがて昼時になった。
「林太郎さん、お昼は軽めでもいいですか? パオラが今晩は家で夕食をごちそうしたいそうなので」
「う、うん」
「リンのためにマンマ直伝のお料理を作るって、はりきっていました」
パオラさんは亜美さんがシェアしている部屋の持ち主だ。
黒髪で瞳は青。俺と同じくらいの年齢らしく、生粋のローマっ子で、美術品修復の仕事をしているそうだ。
なかなかの美人だが、とんでもなく人懐っこくて、会った瞬間から「チャオ、リン」と挨拶されて、しっかりハグされた。しかもかなり話好きらしく、イタリア語がわからない俺にも何かと声をかけてくる。
そんな彼女と亜美さんのやり取りは、見ているだけで楽しかったのだが――。
(明日には、あの家を出ていくんだな)
はじめから決まっていたことなのに、今さらながらひどく残念に思えた。
もちろん俺は見合いと、その後の結婚生活を成功させるために、こうして亜美さんと一緒にいるわけだが――。