教育的(仮)結婚~残念御曹司(?)のスパダリ育成プロジェクト~
 結局、昼食の場所は気楽なピッツエリアにした。
 俺たちが入ったのは人気店らしく、けっこう混んでいて、外のテラス席に通された。

「よかった。ここ、外も気持ちいいんですよ」

 案内された席は大きな日除けの下で、広場に面していた。
 たぶんこの店も適当に入ったわけではなく、亜美さんのおすすめリストに載っているのだろう。

 俺はまた彼女から目を離せずにいたが、一瞬、まともに視線が絡んだ。

 亜美さんの頬がほんの少し赤くなる。
 なぜだかこの瞬間を逃してはいけない気がして、俺は慌てて口を開いた。

「ご、ご趣味は何ですか?」
「えっ?」

 亜美さんは大きく目を見開いたかと思うと、堪えきれなくなったようにふき出した。

「み、見合いの時はそう訊くだろ?」
「ああ、そうですね。ごめんなさい、林太郎さん。私の趣味は……」

 拗ねたように聞こえたのだろうか。亜美さんは困ったような笑みを浮かべて考え始めた。

「私は絵を見たり、音楽を聴いたりするのが好きです。おいしいレストランを食べ歩いたりもするし……そういう点では、イタリアは天国みたいなところですね」
「なるほど」
「あ、だけど一番好きなのは散歩です」
「散歩?」
「はい。いつもは決まったスケジュールで動いていますから、知らない道を当てもなく歩くのが大好きで」
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