教育的(仮)結婚~残念御曹司(?)のスパダリ育成プロジェクト~
 昨日、桐島さんがスマホで俺の写真を撮っていたけれど、その理由がわかった。
 上司である高砂に画像を送って、変身後の状態を確認させたのだ。

「センスゼロの野獣で悪かったな!」

 慌てる亜美さんの代わりに、俺が冷ややかに答えた。

「ったく、言いたい放題だな」
「何だよ、林ちゃん。桐島と一緒にいるのか?」
「はい、高砂先輩。せっかくですから、東野様にローマをご案内させていただいております」

 ようやく亜美さんが会話に入ってきた。

 俺と高砂は小学校時代の名残で、いまだに互いを「ちゃん」付けで呼び合っている。それがおかしいのか、必死に笑いを堪えていた。

「ローマを? 桐島が……林ちゃんに? そりゃ、ほとんど奇跡だな」

 高砂は心底驚いたような声を上げた。

「何だよ」
「だってそうだろ。桐島は林ちゃんみたいに、でかくて物騒な男は本来得意じゃないんだぞ。おまけに超無愛想だし」
「そうなのか?」
「林ちゃん、桐島にちゃんとお礼しろよ。観光のつき合いなんて、彼女の仕事の範疇じゃないんだ。特別大サービスなんだからな」
「……だな」

 ひとしきりしゃべった後、高砂は電話を切った。

 いろいろ遠慮のない男だが、ヤツの言うことはもっともだった。
 ローマの案内どころか、亜美さんは俺の見合いを成功させるために、自宅にまで泊まらせてくれているのだ。
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