教育的(仮)結婚~残念御曹司(?)のスパダリ育成プロジェクト~
「ええ、あります。でも実はまだ行っていないんです……一番好きなところには」
「行っていないのに……一番なのか?」
「はい。子どものころからずっとあこがれていて」
「それはどこだ?」
「フェリチタ庭園です」
亜美さんによると、そこはある十八世紀の貴族が作った庭園で、ローマの近郊にあるそうだ。
中世の修道院跡に数千種類の植物が植えられ、四季折々にみごとな景観が楽しめるという。
――この世で一番美しいところだよ、アミ。そこに行けば、必ず幸福になれる。天国まで届きそうなほど心が躍るから。
そう教えてくれたのは、亜美さんの実家のテイラーに来ていたイタリア人のお客さんだそうだ。
「庭園の生態系を守るために開園日が限られているので、なかなか行けなくて。仕事がありますから」
「そうなのか」
「でも、いいんです。本当にすてきなところみたいなので、ひとりじゃなくて、そのうち誰かと行けたらいいなって思っているので」
瞬間、なぜだか胸の奥がかすかに疼いた。誰か――その言葉が妙に引っかかったのだ。
亜美さんにはそういう相手がいるのだろうか? いや、いたっておかしくない。
(俺はいったい何を考えているんだ?)
胸の疼きは次第に強くなり、どうにも手に負えなくなってきた。
「行っていないのに……一番なのか?」
「はい。子どものころからずっとあこがれていて」
「それはどこだ?」
「フェリチタ庭園です」
亜美さんによると、そこはある十八世紀の貴族が作った庭園で、ローマの近郊にあるそうだ。
中世の修道院跡に数千種類の植物が植えられ、四季折々にみごとな景観が楽しめるという。
――この世で一番美しいところだよ、アミ。そこに行けば、必ず幸福になれる。天国まで届きそうなほど心が躍るから。
そう教えてくれたのは、亜美さんの実家のテイラーに来ていたイタリア人のお客さんだそうだ。
「庭園の生態系を守るために開園日が限られているので、なかなか行けなくて。仕事がありますから」
「そうなのか」
「でも、いいんです。本当にすてきなところみたいなので、ひとりじゃなくて、そのうち誰かと行けたらいいなって思っているので」
瞬間、なぜだか胸の奥がかすかに疼いた。誰か――その言葉が妙に引っかかったのだ。
亜美さんにはそういう相手がいるのだろうか? いや、いたっておかしくない。
(俺はいったい何を考えているんだ?)
胸の疼きは次第に強くなり、どうにも手に負えなくなってきた。