教育的(仮)結婚~残念御曹司(?)のスパダリ育成プロジェクト~
 その晩、キッチンに立ったパオラさんはいつも以上にはりきっていた。
 よく笑い、早口のイタリア語でずっとしゃべり続けていて、俺も亜美さんもすっかり圧倒されてしまったくらいだ。

 だが、そのおかげで俺はかなり気が楽になった。あれこれとグルグル考えるどころではなくなったからだ。

「林太郎さん、今夜はパオラのマンマの得意料理を作ってくれると言っています。チキンとパプリカの煮込み料理と、ズッキーニの花のフライですって。私も前にごちそうになりましたけど、とてもおいしかったですよ」

 パオラさんにつられたのか、亜美さんも少しはしゃいでいる。

 俺自身はそもそもズッキーニが何かも知らないが、彼女が目を輝かせているので、なんだか急に楽しみになってきた。

「じゃあ、林太郎さんはリビングルームで待っていてくださいね。私もパオラを手伝いますから、用意ができたらお呼びします」

 亜美さんが水色のエプロンをつけて、にっこり笑う。
 
 途端に俺の心臓が大きく跳ね上がった。

(うっ!)

 初めて見るその恰好に、動悸がどんどん速くなっていく。

(か、かわい過ぎだろ)

 反則だと思った。亜実さんから視線を外すことができないのだ。
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