教育的(仮)結婚~残念御曹司(?)のスパダリ育成プロジェクト~
「ブラーボ!」

 パオラさんが歓声を上げ、亜美さんも手を叩いてくれた。

「さあ、どうぞ。パオラが、みんなで飲みながら作りましょうって」

 今度は赤ワインの入ったグラスを渡され、俺たちは笑いながら乾杯した。

 そういえば子どものころ、俺は今よりよくしゃべっていた。
 父が忙しい人だったから、決してにぎやかな家庭ではなかったが、大好きな母のそばでしょっちゅう笑っていたのだ。

(もしかして……結婚生活って、こんな感じなのか?)

 まるで柔らかな光に包まれているように、あたたかくて優しいひととき。

(この時間が続けばいいのに、これからもずっと)

 その瞬間、俺の身体に電流が走った気がした。

(俺は――)

 自分が本当は誰といたいのか、いったい何をしたいのか――いや、今から何をするべきなのか、ようやく理解できたのだった。
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