教育的(仮)結婚~残念御曹司(?)のスパダリ育成プロジェクト~
 まるで嵐の波間を漂っているようだった。

 器用に動く指や、丹念に肌を這う唇に翻弄されて、もう何も考えられない。強過ぎる快感に怯えながら、私は同時にそれに酔いしれてもいた。

「亜美……好きだ、亜美」

 強引に追い上げるのではなく、どこまでも優しく、それでいて容赦ない愛撫が続く。

 たぶん慣れていないし、気も急いているはずなのに、林太郎さんは決して急がず、私を気遣いながら追い上げてくれた。

 そして長い時間をかけ、私たちはようやくひとつになった。

「あ、やあっ! ああ、あっ!」

 二人分の荒い呼吸に、時おり混じる甘く濡れた喘ぎ。
 とても自分のものとは思えないが、それは間違いなく私の声だった。

「声、聞かせて……もっと」
「や、だって……恥ずか、し」
「でも、かわいい」

 低く囁かれ、いっそう深く穿たれて、私は大きくのけぞる。

 瞬間、中で林太郎さんの質量がいっそう増した気がした。

「亜美、俺の亜美」

 その夜、私は林太郎さんに導かれるまま、彼の部屋で体を重ねた。

 大学時代の悪夢を引きずる私には、ずっと無理だと思っていた行為。
 それなのに魔法にかけられたみたいに抗うことができずに、いや、私自身もそうしたいと望んで、彼に身を委ねたのだ。

「だめ、あ、あ……」

 今までこんな自分は知らなかった。こんな時間も考えられなかった。

 すべてを暴かれ、優しく揺さぶられながら、私は夢の中へいざなわれていった。
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