落ち切るまでに断ち切って
 言って、私の方へ砂時計をほんの少し押すようにして近づけると、「必要ないと思われたらいつでもお引き取りいたしますので」と微笑まれた。

 その砂時計は見れば見るほど何故か持ち帰りたいという気持ちが膨らんでくる。

「本当にいいんですか? あの、代わりに何か……」
 つぶやくようにそう言ったら、「でしたら、そちらを」と、和博に初めてプレゼントされた例のペリドットのフック式ピアスを指さされた。

「でもこれは……」
 言いかけて、そんなに大事なもの?と改めて考えたらそうではない気がしてきて。

 私は少し迷ってからそれを外すと、「使い古したものですが、大丈夫ですか?」と久遠(くおん)さんに手渡していた。

「問題ありません。大事にお預かりしますね。もしその子が必要なくなったらまたこちらと交換と言うことで」

 言われて、私は少し肩の荷が降りた気がした。

 もしも和博にどうしても納得がいかないと言われてしまったら、その時は交換(かえ)してもらおう。

 そう思って。

 久遠さんは私の言葉を聞くと砂時計を緩衝材でクルクルと丁寧に包んでから、紐の持ち手がついた小さな紙袋に入れてくださった。

「どうぞ」
 手渡された砂時計を受け取る私に、久遠さんが「最後にひとつだけ宜しいですか?」と声を低めた。
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