落ち切るまでに断ち切って
 砂時計の残量は後少し。残り1分切ったんじゃないかな。
 早く横倒しにして立ち上がらなきゃ。

「けど、ずっと一緒にいれば、いつかお前の気持ちも傾くかなって。俺の方に傾いたまま固まってくれるかなって。都合よく期待してたんだけど――。無理だったか」

 泣きそうに微かな笑みを浮かべる和博を見て、胸がちくりと痛む。

「ごめんなさい」
 つぶやいて頭を下げてから、いよいよ今度こそ砂時計を横に倒して立ち上がらないと、って気持ちが急いた。

 もう数十秒で砂は落ち切ってしまう。
 あと5分って、何て短いんだろう。

 私、もう少し和博とちゃんと向き合いたいのに。

 そう思って、ハッとした。

 私――。
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