落ち切るまでに断ち切って
***

 途端グラリと世界が揺れて、「お待たせしました」という声とともに、目の前にアイスコーヒーがふたつ置かれた。

 〝リセット――〟。

 砂時計は最初の時同様、片側に全て砂を落としきった状態で立っていて。
 でも多分、砂が満たされている(フラスコ)が、初回とは逆のはず。

 私はそれをもう1度ひっくり返そうとして、横倒しにした所ではたと手を止めた。

 そのまま机に寝かせて置いてから、
「和博、私、貴方と……」
 言いかけた所で、和博がアイスコーヒーを一口飲んで、私を見つめてくる。

「あれ? 美代子、ピアスは?」
 ドキッとした。
「あ、あのっ、ちょっと……」
 言ってから、何て()()()すれば?と心臓がバクバク跳ねた。

 久遠(くおん)さんは砂が落ち切ったら、再度同じ時間を繰り返すって言っていたけれど、どうも違う気がする。
 別れたい、と告げる前まで時間は戻ってしまったようだけど……その後の流れは違っているような――。
 それに少なからずホッとしている自分がいることに、私は気付いてしまった。

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