お嬢様の恋 ~秘書兼護衛係はお嬢様への一途な想いを隠せない~
咲の髪を撫で続ける玲の母は、涙を拭い玲の方を見る。
「言わないの?」
「・・・言わない。」
「それでいいの?玲は」
「・・・・いいんだよ。いいんだ。言わなくてもきっと咲はわかってる。」
母からの言葉に玲は咲を見つめたまま答える。

もうすでに決まっているタイムリミット。
そして、その先に待っている運命も。

「どうして・・・こんなにも苦しい思いばかり・・・」
また涙を流し始める玲の母。
「今だけは、忘れさせてやりたいんだよ。全部。全部。」
「・・・そうだね・・・せめて今だけは・・・」
「ありがとうな、力貸してくれて。俺だけだったら、無理だった。」
「・・・当然でしょ。私はあんた以上にお嬢様を見て来たんだから。なにかしてあげたいじゃない。たとえ最後だとしても。」
二人は咲の寝顔を見つめながら、眠れない夜を過ごした。
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