お嬢様の恋 ～秘書兼護衛係はお嬢様への一途な想いを隠せない～

「そうね」
もう一度歩き始めた咲からは少しだけ肩の力が抜けている。

「宗川」
「はい」
玲と咲は二人きりとわからない場所ではちゃんとお嬢様と秘書兼護衛係としての会話に徹する。
「ありがとう」
「私は天気の話をしたまでです。」
あくまでとぼける玲に、咲は少しだけ微笑みながら前に進み始める。

玲の背中は大きい。
護衛役とは言っても、程よい筋肉質な体はタイトなスーツも着こなすことができるくらいスタイルがいい。身長は160㎝の咲よりも20㎝以上高い186㎝。
ヒールを履いている咲よりも、まだまだ背の高い玲の後ろは、咲にとって唯一安心できる場所だった。

食事の席に咲が座ってから、30分以上たってから咲の父は入ってきた。
父が来るまで、食事をする部屋は物音ひとつしない。
静寂に包まれた広い広い部屋の中央に置かれた立派なダイニングテーブル。