お嬢様の恋 ~秘書兼護衛係はお嬢様への一途な想いを隠せない~
「今すぐとはいかないが経営に関するプロをお前と共同経営者として立てようと思う。」
「共同経営者?」
「そうだ。この数年、会社をつぶさず成績を上げていることは私なりに評価している。でも、経営にそもそも向いていないのではないかという疑念は拭えない。」
父の言葉に咲は聞き入る。

「一人よりも二人。2人よりも三人。それがお前のやり方だということも。」
確かに咲は一匹オオカミタイプではない。
むしろ、周りの人を巻き込みながら、社員一人一人とちゃんとつながって、前に進みたいタイプだ。
「そもそも、お前は誰かの上に立つことも、前に出ることも、むいていない。ただ、努力をしてやっているだけで、望んでいる立場ではないだろう。」
今まで父には言ってこなかったこと。
でも咲が常に思って来たことだった。

「申し訳ありません。」
役にたてない自分に不甲斐なくなり咲が父に頭を下げる。
「責めているわけではない。私も時々、むいていないのではないかと思うことは今もある。」
何年もかかった。
父とこんな話をできるようになるまでに。
咲は今までとは明らかに父との関係が変わったことを感じて少しうれしかった。
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