お嬢様の恋 ~秘書兼護衛係はお嬢様への一途な想いを隠せない~
「・・・今も庭園に行くのか?」
「はい」
父からの意外な言葉に咲は父の方を目を丸くして見つめる。

「咲の名前はお前の母親が考えた。きれいに咲く花々を見て、美しくかわいらしく、見ている人の心を癒せる子になってほしいと願いを込めて。」
「初めて聞きました。」
「お前の母親も好きだったからな。あの場所が。」
「・・・お父さんも好きだったんですか?」
「花に興味がない。でもよく行っていた。」
父を悪く言わなかった母。
父は母を。母は父を。お互いに想い合っていたのだろう。

「”咲”という漢字は”わらう”とも読むと知っているか?」
「・・・」

咲が笑えなくなった時、政信は苦しかった。
咲という名前を付けたその日のことを思い出しては、胸が痛んだ。
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