お嬢様の恋 ~秘書兼護衛係はお嬢様への一途な想いを隠せない~
次の日の夜、咲は玲に付き添ってもらいながら真岸の通夜が行われている葬儀場に向かった。


葬儀場にはたくさんのマスコミが駆けつけている。

咲は迷惑をかけないように裏口から葬儀場に入る。


玲が用意した車いすを断り咲は自分の足で歩いて葬儀場の中に入った。

倒れてもすぐに支えられる距離に玲がいる。

喪服姿の咲は葬儀場に入った瞬間、けがをしていることを全く感じさせない立ち居振る舞いをする。

「この度は大変申し訳ありませんでした。なんとお詫びを申したらよいか言葉も見つかりません。」
家族の控室に入った咲はすぐに頭を深く深く下げる。

「頭をあげてください。」
真岸の家族は憔悴した様子のまま咲に優しく微笑みかける。
「彼からよく話を聞いていました。いつの間にか、あなたは私にとっても、妹のように勝手に思っていたんです。」
頭を下げたままの咲の背中にそっと手を添えて、泣きはらした瞳で微笑みかけるのは・・・真岸の長年付き合っていた彼女だった。

その場所にいる人は誰もが、真岸の微笑みの面影を持っていて咲は涙をこらえきれずにこぼした。
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