お嬢様の恋 ~秘書兼護衛係はお嬢様への一途な想いを隠せない~
なのに、咲は全く弱音を吐かずに仕事は手を抜かない。

父親と会うときは無理やり自分の体をだましだまし、普通を装う。
会社にいるときは自分の足で歩いて、誰も見ていないところで床に座りこむほど衰弱している。



咲は車いすを押してもらいながらふと窓の方に視線を向けた。

車いすからは窓の外の景色は見えない。



玲が来ることを知らされていない咲。

自分よりも高い位置にある窓の方を見ながら、そこに見えるはずの景色を想像する。

幸せだった。
ちっぽけかもしれないけれど、咲にとっては一番幸せだったあの日々を。
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