お嬢様の恋 ~秘書兼護衛係はお嬢様への一途な想いを隠せない~
「弱すぎる。心も体も。強く育てたかったが器にない。」
「ならば解放して差し上げたらよいのではないでしょうか。」
「この家に生まれて、ほかの道があるか?これだけ世間から注目されて。おもしろおかしく世間は騒ぎ立てる。」
政信の考えを初めて知る玲。
「代表は、今後をどうお考えですか?」
「私に質問するとは。よほど咲に思い入れをしているのだな。」
不敵に微笑む政信に、玲はとっくに自分の咲への想いを知られていることを悟った。
「幼いころからずっと一緒でした。思い入れしないほうが難しいです。」
「・・・そうだな。」
政信は前を向いたまま、話をしなくなった。

玲もそれ以上話はしない。

咲と一緒にいる時、政信は年に数回しか会えない存在だった。
そしてそのたびに咲につらく厳しく当たる、冷徹な心を持たない人物だと思っていた。
しかし、一緒に仕事をすると全く印象が変わる。
確かに、経営するには最適な性格で判断力もずっとずっと先を見通す力を持っている。
< 93 / 320 >

この作品をシェア

pagetop