好みの彼に弱みを握られていますっ!
「貴女が考えていることは大体想像がつきますよ?」

 なのにじっとこちらを見つめられてそう言われた私は、本当に心の内を見透かされたみたいな気がしてドキッとしてしまう。

 そもそも、そんなかっこいいお顔で意味深な笑みを浮かべるのは卑怯です。

 私、織田(おりた)課長のこと、丸っと全部好きなのかも知れない、とか錯覚してしまいそうになるじゃないですかっ。

 あくまでも私が好きなのは織田(おりた)課長の見た目とお声だけ。

 中身とは到底折り合えそうにないのです!



「着きましたよ」

 ポン、と音がして、織田(おりた)課長にそう告げられた私は、見るとはなしに階数表示を見て「に、23階っ」と思わず声に出してしまった。

 私の年齢と同じだけれど、マンションでこの階数って結構上の方なんじゃないかしら。

「残念ながら、最上階ではありませんよ?」

 このタワーマンションの1番上は32階らしい。

「そ、それでも半分よりは上じゃないですかっ」

 と言ったら「またわけの分からないことを」と笑われてしまった。
< 101 / 571 >

この作品をシェア

pagetop