好みの彼に弱みを握られていますっ!
 エレベーターが開くと、そこは誰某(だれそれ)様邸の玄関でした、みたいなのをテレビで見たことがあるけれど、さすがにそこまでではないみたい。

「行きますよ」

 エレベーターを降りたら普通に通路で、ちょっとだけホッとする。

 とはいえ、私が見慣れているような外廊下タイプ――手すりの向こうにすぐ外が見えるもの――ではなく、いわゆるホテルなんかによくある中廊下タイプ。

 外界に対して開け放たれていない分、共用廊下までしっかり空調が効いている上に、大理石のような高級感漂うシックな床が続いていることに少なからず驚いた。

 この床、ツルツルして滑りやすいかと思いきや、何かでコーティングされているのかな?
 足裏をしっかりとホールドされるようなキュッ!という粘りを感じて、下手すると逆につまずいてしまいそう。

 ――気を付けなきゃ。この人の前で転ぶとか恥ずかしすぎるっ!



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