好みの彼に弱みを握られていますっ!
「緊張がほぐれたみたいで何よりです」

 私の減らず口を受けて、織田(おりた)課長がこちらを振り返るなりクスリと笑って。

 その笑顔が何かを企んでいるようにしか見えなくて、ヒィッ!と思う。

 そういえばこの人、さっき駐車時間のことで不穏なことを言ってた!と思い出した私は、ゾクリと走った悪寒に織田(おりた)課長から数歩分距離をあけるように後ずさった。

 と、同時に足がキュッ!と床に捕まって、バランスを崩して転びそうになって。

 ――あーん、さっき気をつけなきゃって思ったのに私のバカ!

 思わず「イヤァッ!」と「キャッ!」が混ざって、「いにゃぁっ!」とかいう変な声を上げて踏ん張ったら、織田(おりた)課長にめちゃくちゃ笑われてしまった。

 ――もう! こうなったのは誰のせいだと!

 声にならない抗議を心の中で発しながら、つくづく思った。


 本当、織田課長(このひと)ってば、腹黒くて意地悪です!
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