好みの彼に弱みを握られていますっ!
***

「――で、どういう理由(わけ)だったんですか?」

 まるでモデルルームのような整然とした部屋の中。

 ソファも床も、壁一面を覆う造り付けらしき棚も、何もかもがダークブラウンか、もしくは黒を基調とした色合いで統一されていて。

 これで天井まで黒っぽかったりしたら重苦しいこと極まりないところだけれど、そこはさすがにクリームがかった白に、電球色のLEDライトでホッとする。


 アイランドキッチンの向こうでは、織田(おりた)課長がこちらに背中を向ける格好でコーヒーメーカーをセットしていらして。

 私はそれを落ち着かない気持ちで、「ここで待つように」と言われたソファに座って眺めながら、「何かお手伝いしましょうか?」と言う言葉を何度も口に出しかけては飲み込んで、を繰り返している。

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