好みの彼に弱みを握られていますっ!
 このお洒落な空間で、私が何か出来るようには思えない。
 かと言って、言われるがままボーッと座っていられるほど神経が図太くもないの。

 ソワソワしながらお尻を浮かせたり付けたりを繰り返していたら、織田(おりた)課長が「何も手伝う必要はありませんからね」とこちらに背中を向けたまま言ってくる。


 ――ちょっ、何で分かったんですかっ。後ろにも目がついてるみたいでめっちゃ怖いんですけどっ。


 思いながら、「で、でもっ」と、尚も言い募ろうとしたら、「来客があって、おもてなしをするのは家主(ホスト)仕事(つとめ)でしょう?」といなされる。

 それで仕方なく浮かしかけた腰をソファにつけておとなしく待ってはいるものの、織田(おりた)課長が言うと〝ホスト〟が別の意味に聞こえてザワザワするな、とか思ってしまった。
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