好みの彼に弱みを握られていますっ!
 せっかく座り心地のいいソファなのに、背もたれに背を預けて深く座るとかは到底無理で、今にも落っこちそうなくらい浅く浅く腰掛けて、両ひざの間が開かないよう、斜めに下ろして揃えた足にグッと力を込める。

 ――ああ、これ、面接の時の椅子の腰掛け方だ。絶対疲れるやつ。


 そんなことを思っていたら、珈琲の良い香りがし始めて、ややして「どうぞ」と、ソファ前に置かれたネストテーブルに、湯気のくゆるコーヒーカップが2つ置かれた。

 白っぽい大理石調天板のローテーブルに、違和感なく溶け込む、耐熱ガラス製と思われる、透明なコーヒーカップ。

 何これ、何これ! カップまでスタイリッシュとかっ。

 可愛い癒し系絵柄で描かれた、パステルタッチのナマケモノイラストのマグカップを愛用している私は、容器が透き通っていると言うだけで落ち着かない。


 私がいつもカフェラテばかりを飲んでいるからかな。

 私の前に置かれたものには少量の珈琲に、たっぷりのミルクが注がれているようで、かなりのところ白っぽい茶色だった。

 逆に、少し離れた位置に置かれた織田(おりた)課長のものはブラックに見えるので、「おもてなしする」という言葉も満更嘘というわけではなかったのかも知れない。
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