好みの彼に弱みを握られていますっ!
「私は逆に課長呼びの方が落ち着くんですけど」

 それでも言わずにはいられなくて、堪らずそう言ったら、「〝柴田さん〟、呼び名の変更は上司命令ですよ?」とか、ズルくないですか?


「プライベートだと言ったかと思えば上司命令とか! 織田(おりた)課長はズルイです!」

 景気付けのようにグイッとカップの中のブランデーカフェオレを数口飲んでそう言ったら、

「でしょう? プライベートで仕事っぽい発言をするのはズルイことなんです。分かって頂けて光栄です」

 って、論点をさらりとすげ替えられてしまった。

 そっちがその気でしたら私ももう容赦はしませんから。


 でも、とりあえずもう少しお酒の力をお借りしたいところです。

 私はカップの中身を全部飲み干してから、ホワホワとした頭で織田課長――もとい宗親(むねちか)さんをジッと見つめた。



「それで、ずっとお伝えしそびれていた私が泣いた理由なんですけどね――」

 とりあえず頭がまだしっかりしている間に、それだけはお話しておこうと思います。
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