好みの彼に弱みを握られていますっ!
 ベッドにガバリと身体を起こした私を、宗親(むねちか)さんがどこか温かい(生温い?)眼差しで見つめてくる。

「母を送り出して戻ってきてみたら。――まさか本当に眠っているとは思いませんでした」

 可愛らしいイビキもかいてましたよとクスクス笑いながら、
「これでしたら母に顔を見られても問題なかったですね。――あ、でもさすがに鼻がピーピー鳴ってるのは無防備すぎてダメだったかな」

 揶揄(からか)うように付け加えられた私は、真っ赤になりながらギュッと布団を握りしめる。

 イビキとか……鼻がピーピーとか絶対嘘だ!
 嘘に決まってる!
 っていうか嘘だと信じなきゃやってらんないよぅ……。


「同居を始めるにあたって、僕のベッドじゃ眠れないかもしれないし、春凪(はな)用のをもうひとつ別室に用意すべきかな?とか思っていましたが……。〝必要なさそう〟で安心しました」

 意地悪くニヤリと笑われた私は、瞳を見開いた。


 今、この人、さらりと恐ろしいことを言いませんでしたか?

 確かにこのベッドはキングサイズで……大人がふたり並んで眠ることぐらいなんてことない。
 正直な話、寝心地も最高でした!

 ……そう思う。

 思うけれどっ!
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