好みの彼に弱みを握られていますっ!
 彼ほど、とびきりの笑顔が〝胡散臭く〟見えてしまう人はいないのではないでしょうか。

 きっと、私以外の人になら効果覿面なんでしょうけれども、貴方の腹黒さを知り尽くした私には通用しないんですからね?


 そう思ってキッと宗親(むねちか)さんを睨みつけたら、「ん?」と小首を傾げられて。

 そのあざとい立ち居振る舞いに、不覚にも心臓をズキュン!と撃ち抜かれてしまった。

 そんなキラキラした極上のご尊顔でそんな仕草、ずるいです!

 さっき、大型犬な眼差しで気を付けないと!って痛感させられたばかりだったのに、思いっきりときめいてしまったじゃないですかぁ〜っ!


***


「とりあえず寝巻きは僕の服を適当に着回すとして。――下着は新調したほうがよろしいですよね?」


 さて、今日の夕飯は何にしましょうか?みたいな〝ノリ〟で問いかけられた私は、その雰囲気に釣られたように「ああ、それもそうですね」と何の気なしに答えてしまってから彼の視線がチラリと下腹部を流れたことに気づいてハッとする。


 ――し、下着って……もしかしてショーツのことだったりします!?


「ちょっ、それ、セク……!」


 セクハラ、という言葉がうまく出てこない程度には動揺してしまった。

 ワナワナと唇を震わせる私に、宗親さんがのほほんと続ける。


「緊急事態ですし、コンビニのになりますが、そこで買っちゃいましょう。必要経費ということで、お金は僕が出します。――上はさすがにないかも知れないんですけど……最悪取り替えられなくても耐えられたりしますか?」


 私の戸惑いなんてどこ吹く風といった様子で、まるで事務連絡みたいに淡々とそこまで言ってから、
「あ。もしかして夜もブラをして寝る派だったりします?」
 って。

 そこにきて初めて私の様子をうかがうの。
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