好みの彼に弱みを握られていますっ!
 そっ、そんなことないですけどっ!

 でも、いっそのこと「して寝るに決まってるじゃないですか!」って言っちゃいたい気分です!


 恥ずかしさから、顔をぶわりと熱っぽさに支配されて。

 まるで発熱した時みたいにうるりと涙目になってしまった私に、初めてハッとしたように
「ああ! 申し訳ない。男から下着のことを言われるのとか、物凄く引きますよね」
 と、宗親(むねちか)さんが苦笑まじりに鼻の頭を掻いて。

「気持ち悪かったですよね、すみません」

 まるで失態を誤魔化すみたいにふわりと私の頭を撫でてくる。

 それだって、下手したら立派にセクハラ案件な気がするのに、触れ方がどこか兄が妹に接するような優しい手つきに思えたからか、不思議と嫌じゃなくて。

 ばかりか、どこか心地良い何とも言えないくすぐったさまで伴ったから、慌てて布団を握りしめた手指に力を込めた。

 セクハラって、悔しいけれど同じことをされても受けた側がどう感じるかによってボーダーラインが揺れるんだと、頭の片隅でどうでもいいことを考える。

 宗親さんにされるアレコレは、結局のところ私にとっては何ひとつセクハラにはならない気さえして、期せずして溜め息がこぼれた。
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