好みの彼に弱みを握られていますっ!
***

 ようやくベッドから抜け出した私は、とりあえず鞄を手に洗面所をお借りした。

 横になっていて、少し乱れた髪を整えようとバッグの中の化粧ポーチからいつも持ち歩いている折りたたみのクシを取り出して髪の毛をとかす。

 そうしながらふと口を開きっ放しの鞄の方を見て。

「あっ!」

 ――そう言えば、あれこれあって、お返ししそびれてた!


 すぐさま5万円近い残額が入った、お気に入りカフェ『Red Roof』のプリペイドカードを手に、リビングのソファーでくつろぐ宗親(むねちか)さんに詰め寄った。

「宗親さんっ!」

 カードを机に置いて、ズイッと滑らせるように宗親さんの方へ押しながら

「これ!」

 と言ったら宗親さんが「ああ」とつぶやいた。

 ここからモーニングを食べさせていただいたあと、宗親さんと葉月さんのコーヒー代を出して……その時に――結局ほとんど残してしまったけれど――、私もカフェラテを追加で飲ませていただきました!

 ――もう充分過ぎるぐらいおごっていただきましたので、お返しいたします!


 そう言うつもりで差し出したカードだったのだけれど。
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