好みの彼に弱みを握られていますっ!
 もぉ、やめてくださいっ!
 カッコ良すぎてニヤけそうになるので!

 ――ここで笑ったら負けだっ。

 そう思って唇に力を入れる私に、

「っていうか――」

 心底楽しそうに声を出して笑いながら、「春凪(はな)、ひょっとして自分が従順だと思っているんですか?」って失礼じゃないですか?

「わ、私っ、素直過ぎて……宗親(むねちか)さんには結構好き勝手扱われてきたと思うんですけど!?」

 ムッとして宗親さんを睨むように見上げたら、「キミが僕の言うことに従うのは、納得がいった時限定でしょう?」と頭をふんわり撫でられる。


「ちょっ、やめてください」

 慌てて一歩後ずさって彼の手を避けたら「ほら、理不尽だと感じたときは、そうやって遠慮なく抵抗する」って瞳を細めていらして。


「さっきも春凪、僕の金銭感覚がおかしいって叱ってくれましたよね?」

 さっき、というと結局受け取ってもらえず終いのギフトカードの事を話したときだよね?

 そう思って小さくうなずいたら、宗親さんが珍しくちょっぴり困ったような顔をなさって。


「自分で言うのも何なんですけど……僕はどうも世間様とはズレた所が散見されるようなんです。特に金銭感覚――」

 と大きく溜め息を吐きながら私を見つめるの。

「だからね、春凪には僕が変なことをした際、軌道修正をしていただきたいのです。僕に臆することなくバシバシ物が言える女の子なんて、正直初めて出会いました。だから、――僕にはキミが必要なんです」

 真剣に、「キミが必要だ」と言われてチョロ子の私がグラつかないはずがない。

 ましてや宗親さんは、私にとって好みのお顔のど真ん中。


 物凄く照れ臭いんですがっ。
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