好みの彼に弱みを握られていますっ!
「――要はキミの胸を〝見なければ〟いいんでしょう? 本音を言うと服の中に手を差し入れて、じかにその柔らかそうな胸を撫で回したいところなんですけど、まあ、〝今日のところは〟シャツ越しで勘弁してさしあげます。――ですので、キミも少しだけ僕に譲歩してコレとコレ、取ってくださいね?」

 何でそんなに上から目線なんですか、宗親(むねちか)さんっ!

 しかも澄ましたお顔で、いつも通り丁寧な言葉遣いで話していらっしゃますけど、紡いでおられる内容自体は物凄く卑猥で……堪らなく〝男臭い〟ですからね!?

 でもどうしよう。

 私、彼のそう言うところが実は嫌いじゃない気がしてきました。

 というより、正直めちゃくちゃマズイです。

 どうしようもなくキュンキュンしてしまっています!とか申し上げたら、変態街道真っしぐらになりそうで。

 腹黒ドSな宗親さんにだけはバレたくないです。


「さあ、早く」

 このまま黙っていたら、「ご自分で脱げないのでしたら僕が脱がして差し上げましょう」とか言い出しかねない気がして、私は覚悟を決めた。


「だ、脱衣所で脱い、で来て……いいですか?」

 脱ぐことは決定事項だと思って諦めます。
 でも、目の前で脱ぐのは勘弁していただきたいのです。

 涙目で宗親さんを窺い見たら、「致し方ありませんね」と溜め息を落とされた。

「――ですが、1分以内です」

 寝室の扉に手を掛けた私に、宗親さんの低い声がかかる。

「それ以上は待ちませんので、そのつもりで」


 おかしいです。

 いつの間にか物凄くガッツリと、イニシアチブを握られている気がします!

 私が握られているのは、どうやら〝弱み〟だけではないようです!
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