好みの彼に弱みを握られていますっ!
春凪(はな)、いい子だからそのまま口を閉じないで?」

 言われて、「え……?」とつぶやいた私は、そのせいで宗親(むねちか)さんの口中への侵入を、いとも簡単に許してしまった。

「ふ、……ぁっ」

 いきなりこんな舌を絡めるような口付けをされるとは思っていなかった私は、宗親さんに組み敷かれたまま、何が起こっているのかイマイチ把握できていなくて。

 チュク……、っと舌先を吸い上げられた感触に、ゾクリと身体を震わせてからやっと……。
 とっても淫らなキスをされているんだと頭が追いついた。

 唇を開放されてすぐ、約束が違います、という意思表示を込めて「……宗親さ、電、気っ」って言ったら「僕は切るなんて一言も言ってませんよ?」ってクスッと笑われた。

 そういえばさっき、宗親さんは「春凪(はな)が無事に僕のそばまでたどり着けたら、ね?」って言った。
 たどり着けたらどうするかを、巧みに誤魔化されていたことに気付けなかった自分の馬鹿さ加減にほとほと嫌気がさす。
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