好みの彼に弱みを握られていますっ!
「ダメ? 却下ですね、春凪(はな)。先に申し上げた通り、僕は先程1分以上キミのことを何も言わずに待って差し上げました。なので、残念ながらそんな余裕はもう、微塵も持ち合わせていません」

 そこでフッと意地悪く口角を上げる宗親(むねちか)さんを見て、余裕がないとか嘘だって確信した。

 なのに、彼の大きな手でやんわりと左の乳房を包み込むように押しつぶされた私は、逆に宗親さんに抗議するゆとりを奪われてしまう。

「んっ、やぁ……」

 ――胸なんて(そんなところ)、触らないで。

 コンプレックスのかたまりでしたかない、胸のふくらみは、だけど大きさだけはEカップとそこそこにボリュームがあって。

 私の忌まわしい〝陥没乳首(ひみつ)〟を知らない男の子たちは、しばしばその大きさに騙されて吸い寄せられる。

 だけど脱いだら残念がられることを誰よりも知っている私は、異性がそこに興味を持つことに強い抵抗があって。


 生まれて初めてのエッチのとき、元カレ(こうちゃん)にその見た目で明らかにガッカリされたのを思い出した私は、思わずギュッと身体を固くした。

 こうちゃんにだって、エッチの(そうなる)前に、胸のことを話していなかったわけじゃない。

 なのに触れてもらっても勃ち上がらなかった乳首に、愛想を尽かされてしまった。

 きっと、宗親さんだって……。
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