好みの彼に弱みを握られていますっ!
 ――そ、そんなことを言われても困りますっ。

 即座にそう言って宗親(むねちか)さんの要求を跳ね除けたいのに、何故かそれを出来ない雰囲気があって。

「あ、あのっ……」

 モニョモニョと煮えきらない態度で瞳を揺らせたら、宗親さんの距離がグッと近くなった。

 そうして私の耳元、まるで意図的に耳の中へ吐息を吹き込むようにして、宗親さんがささやくの。

「もしかして自分で脱ぐのは恥ずかしいですか? だったら……僕が脱がせてあげましょう」

 宗親さん、お顔だけじゃなくて声までイケボとか、本当ズルすぎますっ!


 彼が近づいてきた瞬間、顔を見てはいけないというのはちゃんと思っていて、私、見ないように頑張ったのに……。
 ひどい。
 声までは防ぎきれないじゃない!

「――ね?」

 畳みかけてくる宗親さんの声に思わずゾクリと首筋から背中に快感の波が流れて、私は「んっ」と小さく声を上げて打ち震えながら悶えた。

 わけも分からないままに涙目でコクコクとうなずきながら、きっと、さっき〝中〟を探られて高みへ昇らされた時の余韻が、まだ身体の奥底に残ってるんだ。

 そう気付いたけれど、だからってどうにもならないじゃないっ。
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