好みの彼に弱みを握られていますっ!
 私、今また、身体がすっごく熱くなってきてる。
 絶対まずいっ。

 そんなことを思いつつ。


 それできっと、宗親(むねちか)さんからの恐ろしい申し出への返答を間違えてしまったことにも気付けなかったの。


春凪(はな)、一旦身体を起こしましょうか。そうそう、上手。……それで、そのままばんざーい」

 優しく宗親さんにうながされて、熱に浮かされて判断能力を失った役立たずな脳ミソのまま、私はよく考えもせずその声に従って半身を起こすと、素直に諸手を上げた。


「聞き分けのいい子は大好きです」

 ご機嫌な様子の宗親さんに「ヨシヨシ」と褒められて、さらに一層気持ちが舞い上がる。
 飼い主に褒められて尻尾をブンブン振るワンコの気持ちが、今だけは痛いくらいに分かる気がする。

 そんな私からスポッとダボダボなシャツが抜き取られるのはいとも簡単なことだった。

 急にヒヤッとした空気に素肌がさらされて「……え?」って思った時には後の祭り。

 再度トン、と肩を押されるようにしてベッドに寝そべった私は、背中に直接触れるなめらかなシーツの感触に瞳を見開く。

 宗親さんに、「春凪(はな)、キミは思った通りすごく綺麗な身体をしていますね」って涼やかな目で見下ろされて初めて、私は自分が下だけ履いた、すっごく恥ずかしい格好にされてしまったことを〝強く〟自覚した。
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