好みの彼に弱みを握られていますっ!
 その笑顔に思わずキュンとして。
 それと同時、下腹部がトロリと生温かく濡れて、触れられてもいないのに、と信じられない気持ちでいっぱいになる。

 だって私、行為のたびにずっとずっと……濡れにくいってコウちゃんから責められていて……実際元カレには何をされても全然潤ったことなかったんだもの。

 敏感な秘芽に触れられるのも、その下の入り口に触られるのも、ただただ痛いだけだった。

 さっき、宗親(むねちか)さんに触れられて、初めて快感を感じて……そこがしとどに濡れたことにも驚いたけれど、今は何にもされていないのにこれ。

 いつも、ローションをたっぷり垂らされてからでないと、男の人を受け入れることがままならなかった私なのに、一体どうしちゃったんだろう。

 今日はたまたま?濡れたけれど、いつもはローションが必須なんです、って正直にお話したら、宗親さんはどんな反応をなさるのかな?

 面倒くさくなって、夫婦ごっこはやっぱりやめましょうっておっしゃるかしら。

 きっと、宗親さんはローション(そんなもの)なんて、用意したりなさらないはずだもの。

 そこまでして私みたいな不出来な女の子を抱かなくても、きっと彼ならもっといい女性(ひと)が見つけられるはず。

 頭ではそう思うのに、何故か割り切れない気持ちがして、胸の奥がチリチリと痛んだ。

 おかしいな。さっきまでは宗親(むねちか)さんが他の女の人に手を出してもいいって思ってて……。
 こんな風に嫌だとか感じたりしなかったはずなのに。

 ――私、どうしちゃったんだろう。

 今まで感じたことのない快感を、初めて宗親さんによって植え付けられたから?

 私をこんな風に淫らな女の子に変えておいて。

 その宗親さんが、私以外の人とどうこうなるのは……イヤだって思ってしまってる?


 ああ。私、この感情、知ってる。

 ――これは……独占欲と嫉妬心だ。


 そうハッキリと自覚した私は、涙に潤んだ目で宗親さんを見上げた。
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