好みの彼に弱みを握られていますっ!
 そうして――。
 きっと私のために用意された〝この〟一室も、そのためのものに違いないんだ。


 宗親(むねちか)さんから離れて、自分に当てがわれた部屋――優に20平米はありそう――の中に入って、私はほぅっと小さく吐息を落とした。


 この部屋には私がアパートから持ち込んだ白と薄桃色とを組み合わせた、乙女チック全開の小さめドレッサーと。

 同じような配色のパソコンデスクがポツネンと置かれている。
 パソコンデスクの上には愛用のノートパソコンとプリンターが乗っかっていて、白を基調としたノートパソコンはともかくとして、プリンターはすっごく珍しいピンク色。
 その、プリンターとしては珍奇な桃色が、これまたシックな色合いばかりの織田(おりた)邸ではかなり違和感を醸し出していた。

 プリンターを買い替えに行った家電量販店で、展示されていたこれと同じ実機を見て、「何これ可愛いっ♥」って一目惚れをして即決でお迎えしたのだけれど、この部屋に移り住むことが分かっていたら、さしもの私だって、こんな風変わりな色、選ばなかった……。

 同じように、ドレッサー前に敷いたローズ色のハート型をしたフワフワもこもこラグも、アパートではあんなに可愛く見えていたのに、ここに持ってきた途端めちゃくちゃ浮いて見えるようになってしまった。
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