好みの彼に弱みを握られていますっ!
 そもそも私にあてがわれた一室も、ウォークインクローゼットが付いていて、たんすなども必要ないといった仕様。


 テーブルなんかにしても、リビングで宗親(むねちか)さんが使っていらっしゃるものを拝借すれば済む話だから、これと言って要りそうなものはなくて。

 結局家具類は宗親さんの家にはない小さなドレッサーと、パソコンラックぐらいしか残らなかったの。

 厳選するとは言ったけど、ここまで!?と思ったら何だかちょっぴり虚しくなった。


「う〜」

 たった2つだけ残されたドレッサーとラックを前にうなる私に、「春凪(はな)、本当に〝厳選しました〟ね」と瞳を見開いた宗親さんのお顔が忘れられません!


 家電にしても、昨今、メディアはテレビを使わなくてもスマートフォンで観られてしまうから必要性がなかったし、冷蔵庫や洗濯機、電子レンジなんかにしても、私が使っているものは何ひとつニーズを感じられなかったとか……。


 仕方がないとはいえ、何だか寂しくないですか?


***


 そんなこんなで、あれよあれよと言ううちにお引っ越しは呆気なく完了してしまい――。


 その所要時間、引越し先での整理整頓も含めてたったの1日!


 もちろん移り住んだ先は宗親さんのいらっしゃるあのお部屋で。


 ホントのホントにわけも分からないまま。

 私はあっという間にコンシェルジュ付きタワーマンションの住人になりました。


 わーん、あまりにスムーズ過ぎて、正直めちゃくちゃ怖いんですけどぉー!?
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