好みの彼に弱みを握られていますっ!
 僕は今回、春凪(はな)の手に口付けながら、らしくもなく割と本音を彼女にぶつけたつもりだ。

 だけど、もしかしたらそれこそが、春凪(はな)にとっては飲まずにはいられなくなるくらい〝迷惑〟なことだったのかも?

 遅ればせながらそう思い至ってハッとする。

 考えてみれば、さっきだって拗ねている様子の春凪があんまりにも可愛くて……。
 オマケにふと見下ろした彼女のパジャマの胸元がやけに開いていたりしたものだから。
 不覚にも、それに誘われるように思わず春凪を抱き寄せようとして、サラリとかわされてしまったじゃないか。

 あれだって、結構な拒絶の意思表示でしたよね?


 ――あー、これ。良くないな。マイナス思考のドツボにハマりそうだ。


 なのに――。今の春凪はあの時よりさらに無防備で愛くるしいとか……何の拷問でしょうね?


 身体をひねるようにしてソファーに突っ伏したりしているものだから、ゆるふわウェーブの髪の毛が流れて華奢な首筋が丸見えなんですけど。

 ――今ならほんのちょっぴり上気して見える、ぷにぷに頬っぺに触れても怒られたりしないだろうか?

 性懲(しょうこ)りも無くそんなことを思わずにはいられない程度には、今の春凪からは誘いかけるようなオーラが出ている。
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