好みの彼に弱みを握られていますっ!
 確かに宗親(むねちか)さんの出自を思えば、うちとは家の格が違うから色々大変なのかも知れない。
 でも、だからと言ってそんなに嫌になる程なんですか?

 疑問符満載で宗親さんを見つめたら、「まぁ、あくまでも念の為ですから」とゴリ押しされてしまった。

 じゃあ証人欄を埋めてもらわないとって思ってふと見ると、なんて手際がいいんだろう。

 すでに宗親さんのお父様の織田(おりた)嵩峰(たかみね)さんと、うちの父、柴田(しばた)勝己(かつみ)の署名捺印がしてあった。

「お父、さん……」

 てっきり私の方は母――良子(りょうこ)――からのサインだろうと勝手に思っていたから、思わずつぶやいて。
 宗親さんにニコッと微笑みかけられた。
 あ、これ。腹黒くないスマイルだ。

「こうして書面で見ると、本当に僕との結婚をお父様にも許されたんだって実感がわいてきませんか?」

 宗親さんがおっしゃる通り、その署名捺印を見た瞬間、お父さんも、ちゃんと折れて認めてくれたんだな、って改めて思ったの。

 それでじわり涙目になりながらうなずいたら、ふんわり頭を撫でられて、やたらドキドキさせられる。
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