好みの彼に弱みを握られていますっ!
***

「……疲れたっ」

 宗親(むねちか)さん不在のなか、ランチを終えてからずっとパソコンと睨めっこをしてガチガチになった身体をほぐすため、私は管工事課の給湯室からマイカップを手にして、9階のリラクゼーションルームに向かった。
  各課フロアにある給湯室は、本当に飲み物を入れるだけな空間なのに対して、ここはゆったりとソファーで(くつろ)ぐことも出来るし、備え付けのコーヒーメーカーや自販機、給湯機能付きのウォーターサーバーなどを利用して好みの飲み物を入れることも出来る。

 本当は例の赤い屋根が特徴的なお気に入りのカフェ『Red Roof』のカフェラテが飲みたいところなんだけど、仕事が立て込んだ状態で社外に買いに、は無理だなと諦めて。

 せめてもの抵抗に9階まで上がってきちゃった。
 だってね、宗親さんがいらっしゃる時には、何となく気後れしてなかなか出来ないことだなって思ったら、どうしても行ってみたくなったんだもん。
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