好みの彼に弱みを握られていますっ!
「わ、私も……本当は同期のみんなと仲良くなれたらって思ってた時期があって……」

 宗親(むねちか)さんとのドタバタのせいですっかり忘れていたけれど、入社してすぐの頃は飲み会なんかに参加して、少しでも――それこそ同期に限らず――周りと打ち解けられたら、とか思っていたのを思い出す。

「何かちょっと微妙な言い回しだけど……今でも気持ちに変わりない?」

 不安そうに聞かれて、確かに変な言い方したよねと反省した私は、「もちろん」とうなずいた。

「だったら――」

 作業服の胸ポケットから携帯を取り出す足利(あしかが)くんを見て、私はキョトンとする。

「連絡先教えて? 他の奴らとは俺、繋がってるからいくらでも招集かけれるし。せっかくだし、近々飲みに行こうよ」

 わー、この人、結構強引だな?と思いながらも、特に断る理由もなさそうだったから、私、乞われるままに連絡先を交換した。
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