好みの彼に弱みを握られていますっ!
そこで私をギュッと抱き寄せると、「端的にいうと……キミを抱きたいって気持ちがそろそろ限界だったんです」ってささやくように言ってくるとか……ずるくないですか?
私、宗親さんにお飾り程度にしか思われていない様に感じて悲しんでいる真っ最中なのに。
そんな(単に性欲のためだけかもしれないけれど)まるで私のことが〝必要だ〟とでも言わんばかりの理由を上げていらっしゃるとか。
私、ここで暮らし始めてからずっと宗親さんと一緒のベッドで寝起きしていて。
宗親さんは私に対して何もしていらっしゃらないから、まさかそんなことを思っておられるだなんて、思いつきもしなかった。
何なら私ばかり彼のことを意識していて。
思いっきりベッドの隅っこに寄って、毎晩毎晩宗親さんの寝息でさえも意識して眠れない夜を過ごしているんだとばかり思っていたくらい。
「……だけど宗親さん、今までそんな素振り、微塵も見せなかったじゃないですか」
思わず非難がましく言ったら「見せても良かったんですか?」って耳朶を食まれてゾクリと全身が粟立つ。
「よ、良くない、ですっ」
耳を押さえて身体をすくませた私に、宗親さんがクスクス笑って。
「でも今夜からは大いに見せることにしますね」
とか。
偽装夫婦問題で泣きそうだったこともポンと頭から飛んでしまうくらい、私はそのことに気持ちを囚われてしまう。
「――春凪。今夜はいよいよ初夜ですね」
宗親さんの言葉に、私は何も答えることができなかった。