好みの彼に弱みを握られていますっ!
「ひょっとしてキミは……僕に抱かれるのがそんなに嫌なの?」

「そっ、そんなことっ、思ってないです! ただ、私……」

 ――戸惑っているだけなんです。

 入籍したって言われても、一緒に婚姻届を出しに行ったわけじゃないから……イマイチ現実味が伴わなくて、半信半疑なの。

 ねぇ宗親(むねちか)さん。頭のいい貴方なのに、何でそんな簡単なことが分からないの?

 そう言う不満とともに、今ここでこちらを見ようともしない貴方に、「婚姻届、一緒に出しに行きたかったのに!」というモヤモヤをぶつけてもいいですか?

 さすがに今日の宗親(むねちか)さんは色々と酷い!と思ったら、私、とうとう我慢が出来なくなってしまった。

「私っ。宗親さんと一緒にお役所へ行ったわけじゃないのでっ、正直夫婦になったと言う実感が、全く湧いてこないんですっ!」

 一緒に出しに行きたかった、という本音だけは何とか飲み込んだけれど、宗親さんを責めた言い方になってしまったことに変わりはない。
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